日本政府は国民を守らない…「原爆は怖くない」ウソだらけの安全神話

コロナ対策でも同じことが起きている

ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下から75年。アメリカ軍による非道な行為を許さず、その惨状を語り継ぐことは大切である。それと同時に、「日本政府は原爆の被害から国民を守ろうとしたのか」という視点も重要である。史実を掘り起こすと、現在のコロナ対策にも通じる問題点が浮かび上がってくる……。

政府が説く「火の用心」と「手袋」

1945年(昭和20年)8月6日に広島、8月9日に長崎に原子爆弾が投下された。熱線、爆風、放射線が襲いかかり、町は火炎に包まれて「火の海」になり、放射性物質を多く含んだ「黒い雨」も人々に降り注いだ。

死者は広島市で約14万人、長崎市で約7万人(いずれも推計値)。生き残った人々も、放射線や熱線による被害に苦しみ続ける。たった一発の核兵器がこれだけの被害をもたらす。

戦時中の日本では、こうした被害は隠された。「空襲は怖くない」という情報統制と、「逃げずに火を消せ」という防空法が徹底されていたからである。

新聞記事「防空体制変更いらぬ/怖るに及ばず新型爆弾」
 

内務省防空総本部は、原爆投下直後から新型爆弾への対応策を次々に発表した。新型爆弾の威力は強大であると認めながらも、以下のような心構えと準備があれば新型爆弾も「さほど怖れることはない」と説いている。

*8月8日付 防空総本部 談話より
次の諸点に注意すれば被害を最小限度に止められるから各人は実行しなければならぬ。
・待避壕に蓋がない場合は、毛布や布団をかぶって待避せよ
・火傷を防ぐため、手足を露出しない服装にせよ
・家屋からの出火を防ぐため、台所などの火の用心をせよ
*8月9日付 防空総本部 談話より
・軍服程度の衣類を着用すれば、火傷の心配はない
・防空頭巾と手袋を着用すれば、手足を完全に火傷から保護できる

毛布で身を守れる、長袖・長ズボンで火傷を防げる、台所の火の用心……。この程度で被害を防げるから安心せよ、と言っているように聞こえる。

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