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以前の記事で、世界の有名メタルバンドが中国では漢字に置き換えられてしまう為、中国人以外にはさっぱりどのバンドの事を指しているのか、分からなくなってしまっている事を紹介した。たとえば、「Children of Bodom」が「博多之子」と表記されたり、「Nine Inch Nails」が「九寸釘」と表記されてしまうのである。

日本でも外国のバンドをカタカナで表記する事が多々あるが、なるべくオリジナルのアルファベット表記で記述した方がいいのではないかと考えている。カタカナに置き換えると原音から掛け離れた表記になってしまう事があるだけでなく、文字だけではバンド当事者や外国人と意思疎通が図れなくなるからだ。今回はそうした日本だけで名前が変わってしまったメタルバンドを紹介しよう。

・メタルバンドのカタカナ表記も問題あり

それどころか日本版をリリースしたレコード会社が、完全に誤った表記を記してしまったり、ネットで誰かが間違った呼び方で表記したのが先に広まってしまった結果、日本だけ全く見事に呼び名が変わってしまった有名メタルもいる。

なお、実際の発音を読者の方々が確認できる様にするために、発音サイト「Forvo」へのリンクを用意した。バンド名の後の「(発音)」が、そのリンクとなっている。

1.Napalm Death (発音

グラインドコアの帝王で日本のS.O.Bとも交流があり、幾度となく来日経験があり、日本人の妻を持つメンバーが在籍しているほどの親日バンド「Napalm Death」。残念な事に日本では「ナパームデス」と呼ばれてしまっている。より正確な発音に近づけたカタカナで表記すると「ネイパーム・デス」である。なお、筆者は「ナパルム・デス」と呼んでいる人と出くわした事すらある。ちなみに中国語では「死亡汽油弹」。

2. Arch Enemy (発音

スウェーデンのメロディアスデスメタルバンド。日本版レーベルがデビューアルバムを「アーク・エネミー」と表記してしまったため、初期にアーク・エネミーで定着してしまった。最近では「アーチ・エネミー」と表記されるようになったので、日本での発音はふたつ混在した状態が続いている。発音は「アーチ・エネミー」だ。

3. Entombed (発音

スウェディッシュデスメタルのパイオニアのひとつだが、日本では最初期にローマ字読みそのままの「エントムベッド」と呼んでしまった影響力のある人がいて、それが広まってしまっていた。「en-tomb-ed」と、「お墓に入れられてしまう」という意味で「エントゥームド」が正しい発音に近い。

4. Queensrÿche (発音

このバンドは「クイーンズライチ」と誤読されているということ自体が有名。正確には「クイーンズライク」。このバンドも日本版リリース元が誤って「クイーンズライチ」と表記してしまった。ドイツ語の「Reicht」のダジャレなのである。ドイツ語での発音はまた少し異なるのではあるが……。

5. Sepultura (発音

ブラジル出身のスラッシュメタル、そしてNu Metalのカリスマだが、ポルトガル語で「墓」を意味するバンド名。日本では「セパルトゥラ」と呼ばれるが、ポルトガル語の発音は「セプルトゥーラ」に近い。非英語圏バンドの場合、英語では発音が英語風に変わることが多いのだが、このバンドに関しては英米でも「セプルトゥーラ」に近い発音だ。

6. Meshuggah (発音

今となってはDjent(ジェント:へヴィメタルのジャンルのひとつ)のパイオニアとして知られるスウェーデンのバンド。日本では「メシュガー」と、「メ + シュガー(砂糖風)」のように発音されるが、諸外国では「メシューガ」と延ばして発音される。元はヘブライ語で「Crazy」を意味し、発音サイトで聴く限りでは「シュー」と延ばしている感じもしないので、日本人だけが間違っているとは言い切れないかもしれない。

7. Devourment (発音

スラミング・ブルータルデスメタルの創始者として知られるバンドだが、日本でブレークする前、「デボルメント」と発音する人が多くいた。「貪る」とか「食い荒らす」という意味の「Devour」、発音で言うと「ディヴァウアー」に、「ment」と名詞のように造語した「ディヴァーメント」が一番近いカタカナ表記だろう。

8. Cryptopsy (発音

ケベックのブルータルデスメタルの大御所だが、日本でまだ浸透する前に、「クライプトプシー」と呼ぶ人がたまにいた。スペルに「Cry」、つまり「泣く」が入っていたためだろう。これは、区切るところが「地下室」、「安置室」などを意味する「Crypt」であり、それに「解剖」や「検死」を意味する「Autopsy」の語尾を繋げた造語で「クリプトプシー」である。今現在では比較的正しい発音が定着している。

9. Annihilator (発音

カナダと言えばスラッシュメタルバンド「Annihilator」が有名だが、ローマ字読みそのままで「アンニヒレイター」と呼んでいる人が多い。「破壊」、「全滅」を意味する「annihilate」に、「人」を繋げたもので、「アナイアレイター」が正しい発音だ。

10. Alcest (発音

シューゲイザーブラックとして、日本でも絶大な人気を誇るフランスのバンド。国内盤が「アルセ」と表記されてしまった結果、日本ではその発音で広まった。フランス語の動詞「Est」は、「エ」と発音されるので、それと同じと解釈して適応してしまったところが過ちの原因のようだ。Sighの川嶋未来氏がバンドメンバー本人に、「アルセスト」と発音する事を確認した。

ざっと、特に有名な日本で誤読されている有名メタルバンドを紹介した。更にマイナーバンドを掘り下げていけば、他にも日本で誤った発音で定着しているメタルバンドが数多く存在する。

普段、日本人同士で会話する分には支障を来すことはないかもしれないが、海外のメタルファンやバンド当事者には通じない。こういった「和製メタル語」を是正していくのはなかなか大変だが、少しでも疑問に思ったら、バンド名の語源を辿ったり、発音サイトで確認する様に務めていきたい。

執筆:ハマザキカク
イラスト:Rocketnews24

▼SepulturaのAndreas Kisserが「セプルトゥーラ」と発音している。
Say Hello – Sepultura

▼Arch Enemyのインタビュー。終始「アーチエネミー」としか発音されていない。
SPARK TV: ARCH ENEMY – interview with Alissa

▼MeshuggahのドラマーTomas Haakeのインタビュー。スウェーデン人だが完璧なアメリカンイングリッシュ。
Meshuggah’s Tomas Haake Breaks Down Band’s Writing Process