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Twitterで「サルのアイコン」が急増している裏側には何があるのか?


目からレーザーを照射しているサルやヒョウ柄になったファンキーなサルなど、2021年5月頃から、Twitterアイコンを独特のサルアバターに変更する人が急増しています。この裏側には、近年注目される非代替性トークン(NFT)を使ったオンラインコミュニティが存在するとして、投資・芸術・コミュニティを合体させた新たな「NFTクラブ」の存在とそのカラクリをThe New Yorkerが伝えています。

Why Bored Ape Avatars Are Taking Over Twitter | The New Yorker
https://www.newyorker.com/culture/infinite-scroll/why-bored-ape-avatars-are-taking-over-twitter

2021年5月頃から、Twitterのアイコンを「サルのアバター画像」に変更する人が増加しました。アバターとして描かれたサルは目からレーザーを照射していたり、ヒョウ柄になっていたり、葉巻を吸っていたりと独特な装い。これは4月30日に発足した「Bored Ape Yacht Club(BAYC/退屈したサルのヨットクラブ)」がNFTとして販売しているデジタルアートで、もともとの価格はイーサリアム通貨で200ドル(約2万2000円)ほどとなっていました。

BAYC
https://boredapeyachtclub.com/


NFTは仮想通貨の基盤となるブロックチェーンの仕組みを利用し、デジタル作品に固有の所有権証明書を付属させることができるもの。アートの世界やデジタルコンテンツには複製の問題がつきまといますが、NFTを利用すると「本物」を保証することが可能であり、長年の複製問題を解決できると考えられています。

NFTとは何かは、以下で詳細に解説されています。

デジタルな概念に唯一無二の価値を与える「非代替性トークン(NFT)」とは一体何なのか? - GIGAZINE


NFTは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで人々の行動が制限されたこともあいまって、2020年に人気が急上昇。2021年3月には1枚のNFTアートが75億円で落札されたことも報じられました。

1枚のNFTアートが史上最高額の75億円で落札される - GIGAZINE


1万点用意されていたBAYCのアバター画像はリリース後、数日で完売。5月3日にアバターを購入したKyle Swenson氏によると、NFTマーケットプレイスであるOpenSeaにおける当時の販売価格は1700ドル(約18万6000円)にまで上昇していたとのことです。

BAYCは最初のリリースで200万ドル(約2億2000万円)を売り上げ、その後の取引の総額は1億ドル(約110億円)近くに上り、記事作成時点で最も安いサルのアバターでも、その価格は1万4000ドル(約150万円)になっているそうです。


このようなアバタークラブは「ゲート付きオンラインコミュニティ」「株式保有者」「芸術鑑賞会」の3つの要素をミックスしたようなもの。BAYCでは、サルのアバターのうち1つが高値で売却されると、同シリーズのアバター画像すべての価格が上昇します。これは「1つの絵画が高額で落札されると、同じ画家の作品全ての価値が上がる」という伝統的な絵画作品と同じ価値基準であり、アバタークラブの投資的な側面です。またTwitterアイコンを購入したアバターに変更することは、その作家を中心としたコミュニティの一員であることを示す「忠誠心」の現れになります。実際に、Swenson氏がアバターをサルに変更すると、1日で何百万人ものフォロワーが増えたとのこと。これは、アバタークラブの「オンラインコミュニティとしてのつながり」になります。

以下は実際にアバターをBAYCのサルにしているアカウント。

Well I did it... made the biggest trade of my life today. For a truly special ape. https://t.co/Zf4tVvunsw

— Dystopian Beams Ape 'Saru' Bones ???? (@BBones6345)


BAYCのメンバーは主にDiscord上で活発にやりとりを行っていますが、無秩序なインターネット上とは異なり、BAYCは各々が投資を行いリスクを背負っているコミュニティのため、共同体としての感覚が強いといわれています。インターネットが失いつつある共同体の感覚を、BAYCは補っているというわけです。

BAYCの創業者であるガーガメル氏(仮名)はもともとライター兼編集者として働いていましたが、病気を理由に仮想通貨のデイトレーダーとなりました。ガーガメル氏は10年来の友人であるゴードン・ゴナー氏(仮名)と、「これまでのNFTプロジェクトはクローズドシステムであり、限定リリース以降の拡張について想定していなかった」という点や「これまでのアバタープロジェクトは低解像度のピクセル画像を使っていた」という点に着目。これらを踏まえ、2人はより詳細かつリッチなイラストとストーリーラインを持つ、拡張可能なNFTプロジェクトを計画しました。

これがBAYCのイラスト。仮想通貨の世界では、リスクを負いつつ新しい通貨やNFTを購入することを「Aping in」と言うため、Ape(サル)という言葉を使ったジョークとしてサルのアバターが作られたとのこと。イラストには多くのお金を得て退屈するサルが描かれています。また、「ヨットクラブ」はガーガメル氏とゴナー氏の個人的な好みである「マイアミの音楽パブ」をイメージして付けられたそうです。


ガーガメル氏とゴナー氏は、ブロックチェーンの構築に必要なプログラミングを友人プログラマーに依頼し、プロのイラストレーターを雇いました。そして4万ドル(約440万円)ほどの初期投資を行って、体・頭・衣服などを組み合わせて数千パターンのランダムな画像を生成するアルゴリズムを作成。コレクターが支払いを行うまで各画像は表示されず、スロットマシンのごとく、支払後に画像が表示される仕組みにしたとのこと。またBAYCは安い時期にアバターを購入し、値上がり時に売却することで利益を得ることができますが、そのためには「新しい購入者が高い価格でアバターを購入すること」が必要であるため、The New Yorkerは「マルチ商法に少し似ている」と記しています。

BAYCの成功を受けて、多くの人がNFTクラブを創設していますが、このようなNFTクラブの作成者はクラウドファンディングプロジェクトと同様に、立ち上げ前の見込み客に向けて、調達した資金の「ロードマップ」を示しています。物理的な商品やYouTubeチャンネルへのアクセス権、慈善団体の寄付など内容はさまざまですが、BAYCの場合は「BAYCブランドの野球帽の販売」「サル保護区への寄付」に加えて「BAYCの商権」を提供したことが特徴。これにより、クラブのメンバーは、自分自身が作成した製品をBAYCブランドのもと販売することが可能になりました。

既存の多くのブランドのビジネスモデルの中心は独占権であり、知的財産を自由に流通させることはありません。一方でBAYCの創業者は、シリコンバレーの新興企業がオープンかつスケーラブルなソフトウェアを作成してビジネスを指数関数的に成長させているように、NFTクラブをスケーラブルな文化にすることを目指しているとのこと。投資家はBAYCについて、将来的には「分散型ディズニー」となる可能性を指摘しました。言い換えると、人気のあるBAYCのアバターを取得することは、将来的なミッキーマウスの権利の一部を取得することになります。これがNFTクラブへの参加を非常に魅力的に見せているとThe New Yorkerはつづっています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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