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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第250回

withコロナ時代の必需品となるか!? それぞれのやり方で接触追跡アプリの開発を進める各国

2020年06月06日 17時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII

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 世界を驚かせたといっても過言ではない4月初めのアップルとグーグルの提携――新型コロナウイルス感染症(「COVID-19」)の感染者との接触を追跡するための技術で、APIを通じて相互運用性を確実にするというものだ。APIの公開など着々と進んでいる。世界の中には、この2社の取り組みを活用する国もあれば、独自の道を歩む国もある。

ライバル2社の提携発表から約2ヵ月、APIが公開される

 アップルとグーグルの接触者追跡技術は、過去14日に接触した人の中に新型コロナ陽性とわかった人がいた場合、そのことを教えてくれるというものだ。通知を受けた人が検査を受けることで、観戦の自覚がないが陽性という人が減る。これが感染拡大の防止になるという考えに基づいている。

 仕組みとしては大まかには次のようなものだ。

 Bluetooth機能を利用して、近くにいる人同士が持っているスマホ間で、ランダムに生成された固有の識別子を交換する。その後、新型コロナに感染しているとわかった人が、アプリで自らのステータスを「感染していた」と更新する(ただし、陽性申告は厚生省などの保健機関の承認ステップが入る、つまり勝手に陽性申告はできない)と、感染者のスマートフォンにある匿名化されたID情報(14日以内の接触者のもの)が中央のデータベースに行く。

 アプリは定期的にこのサーバーとやりとりをして最新情報に識別子のマッチングをしているため、該当した人に自動的に”感染者と接触していた”という旨の通知がなされる。データはあくまで匿名で、また位置情報データも取得しない。

 アップルが5月21日に公開した「iOS 13.5」には、接触通知APIのCovid Exposure Notificationが含まれている。一方でグーグルはAndroid 6.0以降で利用できるようにしている。

 これに対し、中央のサーバーにデータを集約するタイプの接触者追跡技術もある。アプリとBluetoothを使い、近くにいる人同士が識別子をやりとりする点は分散型と同じだ。その後感染していることがわかり、感染者が自分のアプリで陽性にステータスを変更すると、デバイスが収集した匿名化されたIDと識別子が中央のサーバーにアップロードされる。サーバーはデータベースを使って接触していた人のマッチングをして通知する。

 アップル/グーグルの分散型がプライバシー保護を重視しているのに対し、中央型の場合、国や保健機関は中央のサーバーにあるデータを活用して感染経路を分析することなどができる。

プライバシー懸念を受け、分散型に方針転換したドイツ

 中央型から分散型か。広く普及しており、人々が持ち歩くスマートフォンを活用した新型コロナの追跡技術で、政府は決断を迫られている。

 アップルとグーグルは22の国からAPIへのアクセス要求を受けていると公開している。そのうちの1つがスイスだ。5月末に両社のAPIを利用したアプリ「SwissCovid」のパイロット版がスタートした。

 詳細に報じたZDNetの記事によると(https://www.zdnet.com/article/the-worlds-first-contact-tracing-app-using-google-and-apples-api-goes-live/)、元々はスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とチューリッヒ工科大学(ETHZ)が以前から開発していたプロトコル「DP-3T」をベースにしている。

 DP-3Tは2校の研究者が2ヵ月以上前、新型コロナの感染拡大が始まった頃から開発してきた分散型の近接追跡技術で、アップルとグーグルの技術が成熟・普及すればそちらに切り替わるとのこと。

 お隣のドイツもアップル/グーグルモデルを採用する。ドイツは当初、中央型を進めてきたが、この国の人たちがプライバシーについては大変敏感であり、そのことを配慮しての切り替えとなった。ドイツ政府は4月後半にプライバシーに懸念する公開書簡が出された後に分散型に切り替え、現在SAPとドイツテレコムが開発に参加している。接触追跡アプリが機能するには、多数の利用者が必要とされるが、プライバシーを配慮したやり方で多くの人に使ってもらうという狙いだ。

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