食の好みは年齢で変わるとよく言われる。子供の頃は苦手だったものがいつの間にか好きになり、逆にかつての大好物でも、大人になるとあまり食べなくなる、と……。しかし、果たして本当にそうだろうか? いくつになっても大好きなものが、我々男には確かに存在すると思うのだ。そう、から揚げである。

なぜ男は鶏のから揚げに、ああまでテンションが上がってしまうのだろう? そして、それは何歳まで続くのだろう? 当編集部は全員が30オーバーで、中にはすでに40代もいるおっさん所帯である。にもかかわらず、あまりにもから揚げへの愛が強すぎるのだ。

・ある日の弁当の話

私(あひるねこ)がそんなことを思ったのは、ある日のお昼時に起きた出来事がきっかけだった。当編集部の近所には中華料理屋があり、そこはランチタイムに500円でお弁当を販売している。日替わりのおかず2種類にライスという内容で、味・量ともに優れたコスパ抜群の弁当だ。私を含め、利用する者は多い。

・激アツから揚げデー

お店の名前は「随園別館」。過去にも数回記事に登場しているため、覚えている人もいるかもしれない。さて、いつもおいしい随園弁当の中でも、我々が当たりと呼ぶ日が存在する。から揚げ&麻婆豆腐、通称「カラマー」の日である!

たいていは、から揚げとマーボー豆腐という鉄板の組み合わせで登場するこのコンビ。もちろんマーボーもウマいのだが、このから揚げが素晴らしくウマい。1個1個がゴロっと大きくボリューミーで、衣はパリッとしつつジューシーとまさに黄金バランス。少し濃いめの味付けが、これでもかとご飯によく合うのである。

・から揚げが好きすぎる

だいたい週に1度、曜日はランダムで登場するカラマーに当たった時の、編集部の色めき具合は異常である。随園の袋を持って戻ると「今日何?」と聞かれるのが日常茶飯事なのだが、それがカラマーだった場合、編集部の空気は一気に熱を帯びる。


──今日は……当たりです!

「うっそ! カラマー!?」「マジかよ!」「やべ、買ってこよ!」


私がカラマーの日であることを告げると、その場にいた中澤とYoshioは仕事を中断し、すぐさま事務所を飛び出していった。戻ってきた二人は、この上なく満足気な表情を浮かべていたことを記しておきたい。もちろん、それはこの私とて同じである。

その後、遅れてやって来た和才とサンジュンに至っては、すでに昼食を済ませていたにもかかわらず、カラマーの情報を聞くや否や「とりあえず確保しておきたい」とダッシュで随園に駆けつける始末。結局、その日編集部にいた6名全員がカラマーを食すという異様な事態となったのだった。

・何歳まで続くのか?

繰り返すが、我々は全員が30オーバーのおっさんである。そのおっさん達が、から揚げだけでここまでテンションが上がるのはどういうことなのだろう? サンジュンなんてもう40歳だからな。子どもの頃、40歳はから揚げなんて食べないと思ってたぞ。

・から揚げだけ別格

ただ、味覚が変わっていないかというと、それは正しくない。私の場合、例えばみょうがや大葉、ピーマン、茄子……。子供の頃はあまり好きじゃなかったものが、大人になると積極的に好きになった。

一方で、大人になってから嫌いになったものは、そこまで多くないように思う。昔好きだったものは今でも大体好きだ。しかし、その中でもから揚げの好き度だけは、勢いがまったく落ちていないような気がするのである。

・人智を超えている

自分の死が想像できない──。漫画『ゲットバッカーズ -奪還屋-』のキャラクター、赤屍蔵人のセリフだ。私も、自分がから揚げにテンションが上がらない日が来ることを想像できないでいる。50、60になっても、から揚げにはテンションが上がり続けるような気がするのだ。から揚げ……男にとってそれは、食べ物を超えた何かなのかもしれない。

執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.