介護保険外サービスについて

今回は、介護保険外サービスについてお話ししたいと思います。
最近の介護のキーワードの1つに、「保険外サービス(自費)」というのがあります。 業界用語では「混合介護の弾力化」というキーワードです。


最近の、介護関係の展示会(東京ビックサイトなどで行われる)などでも、保険外サービス(もしくは選択的介護サービス)をテーマとした展示や講演会が多数企画されています。 3/14から、ケアテックス2018が始まります。こちらでも、いくつか保険外のセミナーがあります。

この保険外サービスですが、現時点で禁止されているわけではありません。 ですから、「解禁」という言葉は、正しくありません。

ただ、禁止されていないけれど、その運用ルールが厳しく、使い勝手が悪いために、そのあたりをもっと使いやすくしませんか?という提案を、 今回の改正の話の中に、織り交ぜられていました。そのため「弾力化」という言葉になっているのです。

Adsense(SYASOH_PJ-195)

介護事業所が提供するサービスは、「介護保険内サービス」と「介護保険外サービス」の2つに分けられる

介護保険内サービス

「介護保険内サービス」は、介護保険の給付が受けられるサービスです。利用者は、1~2割を自己負担することで、サービスを受けられます。

「介護保険内サービス」は、介護保険の給付が受けられるサービスです。利用者は、1~2割を自己負担することで、サービスを受けられます。そして、残りの8〜9割については、サービス提供事業者が、市町村に請求をして、残りの報酬をもらう仕組みになっています(法定代理受領方式と言います)。具体的には以下のようなサービスです。

  • 訪問介護、通所介護、短期入所生活介護(ショートステイ)などの在宅サービス(要介護者、要支援者)
  • 小規模多機能型居宅介護などの地域密着型サービス(要介護者、要支援者)
  • 特別養護老人ホームなどの施設サービス(要介護者)

介護保険外サービス

一方、「介護保険外サービス」とは、介護保険の給付がないサービスです。デイサービスなどでは、食事代、おやつ代、キャンセル代を保険外(自費)と分けて記載しています。正直に言えば、介護保険内のサービスというのはとても限定的で、法で決められたもの以外は、保険の給付ではなくなってしまいます。

ですから介護保険内サービス以外は、すべて介護保険外サービスとなります。現時点では、配食サービス、見守りサービス、家事代行などが、有名でしょうか。要は介護保険内サービスに近いけど、法に載っていないので、介護保険外サービスになっているという感じです。

とはいえ、保険外サービスの、サービス範囲や対象者は、保険内と比べると制限がありませんので、とても広くなります。そのため、話が大きくなりすぎて、逆にわかりにくくなります。

今回は、この介護保険内サービスに近いサービスを(対象者やサービス内容が)、保険外サービスとして話をしています。

混合介護とは?今後の方向性について

「介護保険内サービス」と「介護保険外サービス」が一体となって提供されています。これを「(保険内と保険外の)混合介護」と呼んでいます。

介護では、介護保険の開始当初から、「介護保険内サービス」と「介護保険外サービス」が一体となって提供されています。これを「(保険内と保険外の)混合介護」と呼んでいます。

混合介護とは?|介護保険の規制緩和やメリット・デメリットについて - 日刊介護新聞 by いい介護
介護保険ではカバーしきれない範囲を介護保険外サービスで補う「混合介護」が注目されています。 「混合介護」にはど

ただ、運用には厳格なルールがあり、例えば「介護保険内サービスと介護保険外サービスを同時には提供出来ない」というものがあります。

どういうことかというと、9:00~17:00まで、介護保険内のサービスを受けている時は、この時間内に、他のサービスを利用者に提供したとしても、その費用を請求できないのです(すでに介護保険内サービスを払っているので、2重払いになってしまう)。

とはいえ、時間的に割り切る事も難しいことがあり、現時点では理美容サービスに関してのみ同時算定が認められています(施設に入居している方も、理美容サービスは必要ですから)。

今回の改定では、まだ議論も深まっていないので、このサービス提供時間中に、理美容サービスのように、同時算定出来るということにはならないと思います。ただ、この辺りに関しては、東京都と豊島区が今後3年間モデル事業を行い、実際にどうなるか?の検証を行い、今後の可能性を探るようです。

それで、今回、どんなことが使いやすくなるか?というと(まだ詳細は出ていませんが)、1)介護施設で、販売できる物品が増える2)サービス提供時間外に保険外サービスを提供することが出来るという方向になると思います。

ただ、この内容も、今までも事業所の責任で提供していた例があり、自治体により、これらを禁止していた(指導してた)、もしくは黙認していた(指導してない)事実があります。

運用を厳しくしてた自治体があり、不公平感がありました。このあたりを、全国統一基準にして、すっきりさせることを狙っているようです。

ちなみに、医療保険は、この混合サービスを認めておらず(それでも以前に比べて、認められては居ますが)、みなさんも歯の治療などで、びっくりされた経験があると思います。

健康保険では、「健康保険内の医療」と「自費による医療(保険外)」の混合診療は認めていない。ただし、一部だけ認めている「差額ベット代として個室代」「新医療技術」です。最後に、どんな方向で議論されていたか?という資料があります。

1年前に提案された、「介護保険内・外サービスの柔軟な組合せに関する意見(介護サービスの質と利用者満足度の向上に向けて)」平成 29 年4月 25 日 規制改革推進会議の資料から一部抜粋します。

<デイサービス>①事業所への送迎の前後又は送迎と一体的に保険外サービスを提供すること。→ 買い物支援、外来診療支援、夕食の購入・提供等が考えられる。

②保険内サービスの提供を受けている利用者に対し、保険外サービスを提供すること。現在は理美容サービスのみ提供可能とされているが、理美容サービスに限る理由は乏しい。買い物支援やマッサージなど、原則として自由とするべきである。→ たぶん、次回の改定に見送りになる。

③事業所の人員・設備を用いて、保険サービスを提供していない日・時間帯に保険外サービスを提供すること(たとえば認知症カフェなど)。また、同一事業所内に保険サービスを受ける利用者と保険外サービスを受ける利用者が混在すること(たとえば要介護認定が外れた高齢者に対する機能訓練など)。→ すでに実施している事業所がある反面、禁止している自治体もあるこの推進会議に挙げられている、①③に関して、今回は弾力化が進むのかなと予想しています。

とはいえ、介護サービスの幅が広がるのは、利用者・家族にとって有益でありますし、事業所にとっても、新しい収入の柱が出来ることは歓迎されると思います。

一方では、利用者の金銭的負担が増えることで、サービスを利用しにくくなる(そもそもそんなお金があるのなら、公費のサービスは必要ですか?という議論を生む)、運営上の様々な問題に、対応しなくてはいけなくなります(記録法、現場でのオペレーションのデメリットなど)。資料(解釈通知等)が待たれます。

デイサービスの保険外サービスは3つに分けられる

①事業所への送迎の前後又は送迎と一体的に保険外サービスを提供すること。 買い物支援、外来診療支援、夕食の購入・提供等が考えられる。

②保険内サービスの提供を受けている利用者に対し、保険外サービスを提供すること。現在は理美容サービスのみ提供可能とされているが、理美容サービスに限る理由は乏しい。買い物支援やマッサージなど、原則として自由とするべきである。

③事業所の人員・設備を用いて、保険サービスを提供していない日・時間帯に保険外サービスを提供すること(たとえば認知症カフェなど)。また、同一事業所内に保険サービスを受ける利用者と保険外サービスを受ける利用者が混在すること(たとえば要介護認定が外れた高齢者に対する機能訓練など)。

その中の②について、もうちょっとお話ししようと思います。

保険内サービスと保険外サービスの同時提供について

②に関しては、保険内サービスを提供している時に、保険外サービスを同時に提供出来るのは「理美容サービス」のみです。ただ、これがOKになるのは、もう少し先になりそうです。

今年の10月から豊島区で、選択的介護のモデル事業が2年半始まります(実証実験)。この結果を元にして、33年の改定で、サービス提供時間中に、理美容以外の保険外サービスも算定出来るという方向に行くのかなと想像しています。

この豊島区のモデル事業についての資料は、「選択的介護モデル事業に関する有識者会議」に公開されています。

豊島区では、訪問介護サービスで、この選択的介護を以下の3つにテーマに分けて実施します。現時点では、この保険外サービスも、ケアプランに盛り込んで、実施するようです。

サービス事業所側からすれば、保険外サービスなので、ケアプランに入れなくても・・と思うかもしれません。ただ、ケアマネジャーにプランに入れてもらえば、きっちり選択的介護の説明もされますから、説明の手間が省けたり、苦情などの対応も期待できます。

モデル事業だから、ケアプランに位置づけるのか?それとも、今後は、ケアプランに位置づけなくても出来るのか?興味深いところです。

この3つのテーマとは、居宅内と居宅外と見守りサービスになります。

ⅰ)居宅内での選択的介護

指定訪問介護のサービスと、利用者や家族が選ぶ自費サービスを柔軟に組み合わせて、日常生活を支援するサービス

ⅱ)居宅外での選択的介護

指定訪問介護のサービスと、自費の外出支援を組み合わせることで、利用者の意向に合わせた外出を支援するサービス

ⅲ)見守り等サービス

指定訪問介護のサービスに加えて、自費によるICT機器等を活用した見守り等のサービス

先ほどの有識者会議の資料、第4回 平成29年12月26日に資料4:別紙参考資料「サービスメニュー案」というのがあります。

このテーマを、具体的な選択的介護サービスまで落とし込んでいます。

訪問介護の現場では、利用者から様々な希望があり、このメニュー案を自費サービスとして、すでに提供している事業所さんもあるかと思います。

ただ、4月以降、訪問介護以外の、介護サービス事業者が(デイサービス等)がサービス提供時間外に、自費サービスとして、以下のメニューを提供することは可能になると思います。

4月以降、介護サービス事業者がサービス提供外に行える自費サービス

ⅰ)居宅内での選択的介護

居宅内での選択的介護には調理、洗濯、掃除などのほか、本人との話し相手などが挙げられます。
  • 同居家族分の家事(調理・洗濯・掃除等)
  • 本人が行う同居家族分の家事の支援(調理・洗濯・掃除等)
  • ペットの世話
  • 庭掃除や客間の片づけ
  • 電球・蛍光灯の付け替え
  • 電子機器(テレビ・エアコン・携帯電話等)の操作確認
  • 本人と一緒に食事をする
  • 本人の話し相手
  • 宅配・ネット注文サポート(ヘルパーが注文を支援する。)
  • 書類の確認・分別(本人と一緒に郵便物を確認、分別する。)
  • 日用品以外の買い物(ヘルパーが本人の日用品と合わせて、  
     日用品以外(家族分等)の買い物を行う。)

ⅱ)居宅外での選択的介護

  • 日用品以外の買い物(介護給付ではできないデパート等への買い物)への同行
  • 趣味等(区民ひろばや図書館等)への同行支援
  • 散歩
  • 施設に入所・病院に入院している家族への面会・お見舞いの同行
  • お墓参りへの同行
  • 外出先への送迎
  • (介護給付では認められない)院内介助

ⅲ)見守り等のサービス

ICT機器を活用し、訪問介護サービスと組合せることで、見守り支援等を効率的・効果的に提供するサービス

例:ICTにより生活環境(室温や身体状況等)を把握し、訪問介護サービスの内容の改善に役立てる 等

上記の内容を見ると、確かに保険内(公費)では出来ないものばかりです。訪問介護は1対1サービスなので、ご本人の介護のみに限定されています。例えば、お食事も本人分しか作れません(家族の分を一緒に作ると不正受給になります)。

でも、上記のようなサービスを望んでいる人達は、かなりの数にのぼると思います。

このような、痒いところに手が届くサービスは、自費サービスとして利用者からお願いされやすいと思います。

このサービス例を参考にして、事業所さんの保険外(自費)サービスとして、準備されてはいかがでしょうか?

ただし、自費サービスを提供する時間にはご注意ください。

この記事を書いた人

橋谷創(橋谷社会保険労務士事務所代表、株式会社ヴェリタ/社会保険労務士・介護福祉士)

葬儀・お葬式を地域から探す