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3千万円で建てた新築住宅がカビだらけ→メーカー側は不可抗力を主張…どう防ぐ?

取材・文=文月/A4studio
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「gettyimages」より

 戸建て住宅を建てた後に注文住宅メーカーとトラブルに発展するケースは少なくない。依頼主側とメーカーの間での認識の相違などさまざまな要因によって、建てた物件が依頼主の想定と違うものになることも残念ながらあり得るだろう。

 そして今、ネット上で「3000万かけて建てた家がカビだらけになっていた」という体験談が話題になっている。ある依頼主が某注文住宅メーカーに3000万円で注文住宅を依頼したのだが、完成したマイホームの床下には、びっしりとカビが発生していたというのだ。依頼主は「新築なのに、なぜこんなことになるのか?」と憤慨し、メーカーに抗議したが、「ウチの住宅は高気密、高断熱が売りなので湿気がこもりがち。建築中の天候などによってはカビが生えることもありえる」と、あくまでカビの発生は不可抗力であると主張してきたそうだ。最終的にメーカー側がカビを除去することで丸く収まったというが、ネット上では「営業マンが嘘をつき、脅されることも少なくない」「補強工事をしてもらおうにも、予算オーバーの1点張りで対応してもらえない」など、そのメーカーにまつわる黒い噂について指摘する声も散見。注文住宅メーカー側の企業姿勢も住宅選びに考慮すべきだという意見もあるようだ。

 もちろん、依頼主側がどのような工事をするのか把握していないことも考えられるが、このようなケースは業界全体でどれくらい多いのか気になるところだ。そこで今回は住宅診断を行う、さくら事務所のホームインスペクター・田村啓氏に話を聞いた。

カビ発生の原因を立証するのは難しい?

 今回のように新築物件にカビが生えるケースは考えられなくはないという。

「我々がインスペクション(建築の専門家による建物の調査)していくなかで数としては少ないのですが、カビが生えた新築物件は存在します。やはり人間がつくっているものなので、設計ミスがあったり、施工しているうちに設計通りにいかなかったりと、絶対にカビが生えないとは断言できないんです」(田村氏)

 カビ発生という現象の性質上、建物の材質や建てる立地も関係してくるそうだ。

「建物の立地上、湿気の多い場所に建ててしまうとカビ発生の可能性は高くなりますし、施工のスケジュールが梅雨の時期や長雨にと被るとより発生しやすくなります。木材を使う物件だと、木に湿気が溜まりカビ発生につながってしまうことはあり得ますし、そうした状況だと素材の性質的にやむを得ないこともあるでしょう。

 また、今人気の高気密高断熱住宅は、適切に換気をすることで室内の湿気を排出しますが、施工上のスケジュールや手違いで壁の中や床下に湿気が溜まってしまったまま依頼主の方に引き渡されるケースもあります」(同)

 カビ発生をすべてメーカー側の責任にすることは難しいのかもしれない。メーカー側に責任が生じるようなケースはあるのか。

「メーカー側がカビ発生のリスクがあることを事前に把握していたうえでその問題を放置し、建築した場合は責任が問われる可能性もあります。たとえば、根切り(家の基礎をつくる段階で地面を掘る作業)の工程で地面を掘った際に地下水が溢れ出てきた場合には、カビが発生しやすくなるでしょうし、メーカー側も依頼主にしっかりと説明する必要があります。こうした説明を放棄すれば、説明責任を問われる事態へと発展しやすいです。

 ただカビに関しては不確定要素が多いので、具体的な法律の条文に基づいて判決を下すことが難しい問題です。新築物件で雨漏りが見られた場合には、住宅品確法によりメーカー側に補修の責任があるとされることもありますが、先述したとおりカビは発生の原因を断定するのが困難なこともあります。明らかに原因がはっきりしており、かつカビ発生のロジックをしっかりと解明できないとメーカー側の責任を証明できないのです」(同)

良質なメーカーを見分けるコツ

 カビ発生の責任が必ずしもメーカー側にあるとはいえないだろう。しかし、メーカーのなかには悪質な業者もおり、今回のカビ物件のようなトラブルも珍しくはないという。

「悪質な業者の特徴として、図面を渡してくれない、見積もりが出ていないのに契約を促す、自宅に押しかけて無理な勧誘を行ってくるなど、コンプライアンスに抵触しかねないような行動が目立ちます。これはメーカーの経営方針が大きな原因だと考えられます。たとえば、売上だけを重視する経営で現場に負担をかけすぎてしまっているようなメーカーは、当然現場でのミスを誘発しやすくなるでしょう。

 そもそも建築業界では人材不足が深刻化しているので、営業が現場のキャパ以上の無理な注文を受注してしまうことは、現場の混乱を招きかねません。結果、無理なスケジュールが仇となり、注文住宅でもカビが発生してしまうことは想像できます」(同)

 マイホームを建てるということは安い買い物ではないので、メーカーを決める際には自分自身で責任を持つべき。しかし、第一印象や契約書の段階でメーカーの良し悪しを決めるのはかなり難しいだろうし、そもそもマイホームを建てる人のほとんどが初心者だ。はじめての注文住宅は難しいということを踏まえ、メーカー選びで失敗しないためにはどのような点に注意すべきなのか。

「工事品質が安定している施工会社は、年度内で建築する棟数を決めていることがあり、無理なスケジュールで施工しません。安全な現場でスムーズに建築してくれるかと思いますので、気になる方は年間スケジュールを聞いてみてもいいでしょう。

 そして、住宅選びで何より重要なこととして、メーカー側の担当者と密にコミュニケーションをとること。どんな家にしたいのか、どんな施工をしてほしいのかなど、きちんと担当者に要望を伝え、実現可能なのか、もしくは厳しいのかはっきりと答えてくれるメーカーが信頼できますし、望ましいでしょうね。怪しいメーカーだと、回答があやふやになることもあるので、そんなときは断る勇気も大事です。

 しかし、注文住宅は知識のない状態で依頼することが多いのも事実。何が正解かわからない依頼主が大半でしょうから、わからないことがあれば第三者の立場にある建築士などの専門家に聞くことをおすすめします。それと同時に、自分でも最低限の知識を学んだうえで調査して、少しずつ建築に関する疑問を解消していけば、良い家づくりができるのではないでしょうか」(同)

(取材・文=文月/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
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