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Googleが量子コンピュータNISQ向けオープンソースフレームワーク「Cirq」パブリックアルファ版を発表


近年、進化を続けてきた量子コンピューティングの活用を広く進めるべく、Google Quantum AIチームが量子ゲートモデルのNISQ向けのフレームワーク「Cirq」のパブリックアルファ版を発表しました。

Google AI Blog: Announcing Cirq: An Open Source Framework for NISQ Algorithms
https://ai.googleblog.com/2018/07/announcing-cirq-open-source-framework.html

量子コンピューティングの世界においては、ハードウェアの進化が進むと同時に量子アルゴリズムの開発も同様に成長を遂げてきました。「0」と「1」で全ての計算を行う従来のコンピューターとは違い、「量子もつれ」を利用して0と1が重なり合った状態で計算を行うことが可能な量子コンピューターは、原理的には従来型のコンピューターよりも動作が指数関数的に高速化できるとされています。

しかし、「量子ゲートモデル」と呼ばれる量子コンピューターのモデルで実装されているプロセッサは量子ビットにノイズが多く、50~100量子ビット程度の中規模のマシンが主流となっています。このような、ノイズが多く、誤り訂正機能のないアナログの性質の強いゲートモデルは「Noisy Intermediate-Scale Quantum(NISQ)」と呼ばれます。Cirqは、このNISQの作成と編集、実行を行うことが可能なPythonフレームワークで、ユーザーは量子プロセッサ用のアルゴリズムを書くことができます。

世界で初めて開催された「Quantum Software and Quantum Machine Learning(QSQM)」の国際ワークショップでGoogleが発表したCirqのパブリックアルファ版は、近い将来に実現するとみられる「ニアターム(near-term)」な量子コンピューターの問題に焦点を当てており、NISQ量子コンピュータが実用上重要な計算上の問題を解決できるかどうかを研究者が理解できるよう支援するものとなっているとのこと。CirqはApache 2のライセンスを掲げており、商用またはオープンソースのパッケージに変更、または埋め込むことが可能です。


ユーザーはCirqをインストールすることで特定の量子プロセッサ用の量子アルゴリズムを書くことができるようになるとのこと。Cirqはユーザーに対し、量子回路に対する微調整制御、ネイティブゲートを使ったゲート動作の指定、デバイスへの適切なゲートの配置、量子ハードウェアの制約内でのこれらのゲートタイミングのスケジューリングを行います。データ構造は、ユーザーがNISQアーキテクチャを最大限に活用できるように、これらの量子回路の書き込みとコンパイルに最適化されています。 Cirqはこれらのアルゴリズムをシミュレータ上でローカルに実行することをサポートし、クラウドを介して将来の量子ハードウェアまたはより大きなシミュレータと容易に統合できるように設計されています。

Googleはまた、Cirqベースのアプリケーションの例となる「OpenFermion-Cirq」のリリースを発表しています。 OpenFermionは化学問題の量子アルゴリズムを開発するためのプラットフォームであり、OpenFermion-Cirqは量子シミュレーションアルゴリズムをCirqにコンパイルするオープンソースライブラリです。このライブラリを使用すると、分子や複雑な材料の特性をシミュレートするための量子変分アルゴリズムを簡単に構築することが可能であるとのこと。


GoogleではCirqの構築にあたり、初期テスターの各社と協力してアルゴリズム設計のフィードバックを得ています。その取り組みから見いだされたCirqの活用例は以下のようなものだそうです。

Zapata Computing:量子オートエンコーダーのシミュレーション(サンプルコードおよびビデオチュートリアル)
QC Ware:QAOA(Quantum Approximate Optimization Algorithm:量子近似最適化アルゴリズム)の実装と同社のAQUAプラットフォームへの統合(サンプルコードおよびビデオチュートリアル)
Quantum Benchmark:ハードウェア機能の評価と拡張のためのTrue-Qソフトウェアツールの統合(ビデオチュートリアル
Heisenberg Quantum Simulationsアンダーソン不純物模型のシミュレーション
Cambridge Quantum Computing:同社のプロプライエタリな量子コンパイラ「t|ket>」の統合(ビデオチュートリアル)
NASA:QAOAと量子コンピュータのシミュレータの時間計画に基づくアーキテクチャ対応コンパイラ

Cirqは以下のGithubのリポジトリから入手することが可能です。

Cirq/tutorial.md at master · quantumlib/Cirq · GitHub
https://github.com/quantumlib/Cirq/blob/master/docs/tutorial.md

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in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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